非上場株式個人間譲渡における時価評価の重要性とその留意点

非上場株式個人間譲渡時価の算定における留意点

非上場株式の取引は、上場株式のように市場で日々価格が確定するわけではなく、その取引価格を決定する明確なルールが存在しないケースも少なくありません。特に、個人間で譲渡が行われる場合には、当事者間の合意が最も重要な要素となりますが、税務上の観点からは、非上場株式個人間譲渡時価が適正な範囲内であるかどうかが厳しく scrutiny されます。本稿では、非上場株式個人間譲渡時価の算定における留意点について解説するとともに、潜在的なリスクと対応策について考察します。

時価算定の重要性

非上場株式の個人間譲渡において、時価を適正に算定することは、譲渡所得税や贈与税の課税額に直接影響を与えるため、非常に重要です。もし、税務調査によって時価が低すぎると判断された場合、本来支払うべき税金よりも少ない金額しか納めていないことになり、追徴課税や延滞税、場合によっては加算税が課される可能性もあります。

算定方法の種類と特徴

非上場株式個人間譲渡時価の算定方法には、主に以下の３つの方法があります。

１．類似会社比較法

類似会社比較法とは、対象となる非上場会社と事業内容や規模、財務状況などが類似した上場会社の株価を参考に、時価を算定する方法です。具体的には、類似会社の株価収益率（PER）や株価純資産倍率（PBR）などの指標を算出し、対象会社の財務データに適用することで、時価を導き出します。この方法は、比較的客観的なデータに基づいて算定できるというメリットがある一方、本当に類似した上場会社を見つけ出すことが難しい場合や、非上場会社特有の事情を反映できない場合もあるというデメリットも存在します。

２．割引現在価値法（DCF法）

割引現在価値法（DCF法）とは、対象会社の将来のキャッシュフローを予測し、それを現在価値に割り引くことで、時価を算定する方法です。将来のキャッシュフローは、過去の業績や今後の事業計画などを参考に予測します。この方法は、将来の収益力を加味した評価ができるというメリットがある一方、将来の予測が困難な場合や、割引率の設定によって大きく結果が変わってしまうというデメリットもあります。

３．純資産価額法

純資産価額法とは、対象会社の貸借対照表上の純資産価額を基に、時価を算定する方法です。具体的には、総資産から総負債を差し引いた金額に、必要に応じて資産・負債の評価替えを行い、純資産価額を算出します。この方法は、比較的簡易な方法であるというメリットがある一方、将来の収益力を反映していないため、成長性の高い企業には適さない場合があります。

留意すべきリスクと対応策

非上場株式個人間譲渡時価の算定においては、税務調査による否認リスクを常に意識しておく必要があります。税務調査では、上記のような算定方法を用いたとしても、その根拠資料や計算過程の妥当性が厳しく scrutiny されます。特に、個人間譲渡の場合には、当事者間で特別な関係がないことを証明する必要があり、より慎重な対応が求められます。

具体的には、以下の点に注意する必要があります。

時価算定の根拠資料を整備しておく

専門家の意見を踏まえる

譲渡契約書に時価算定の根拠を明記する

税理士などの専門家に相談する

上記のような対応策を講じることで、税務調査における否認リスクを低減することができます。