株式共有による原告適格の法的課題と実務対応
株式共有における原告適格
会社法は、株主の権利保護のために、株主代表訴訟などの様々な訴訟制度を設けている。これらの訴訟制度を利用するためには、原告となるものが、訴えを提起するのに必要な資格、すなわち「原告適格」を有していなければならない。本稿では、複数の者が株式を共有する場合における原告適格、すなわち「株式共有原告適格」について考察する。
1.株式共有の法的性質
株式共有とは、文字通り、複数の者が一つの株式を共同で所有する状態をいう。民法上は、共有の形態の一つとして「共有持分権」が認められており(民法249条)、各共有者は、共有物全体に対して持分に応じた権利を有する。株式共有の場合、各共有者は、株式の議決権や配当請求権などの権利を、その持分に応じて行使することができる。
2.株式共有原告適格の意義
会社法上の訴訟制度の多くは、株主の権利を保護するために設けられているため、原則として、株主のみが原告となることができる。しかし、株式が共有されている場合、誰が株主として訴訟を提起できるのか、すなわち誰が「株式共有原告適格」を有するのかが問題となる。
例えば、株主代表訴訟を提起するためには、原則として、一定期間以上株式を保有している必要がある(会社法847条)。しかし、株式が共有されている場合、各共有者が単独でこの要件を満たしているとは限らない。このような場合に、誰が原告適格を有するのかを明確にする必要がある。
3.判例・学説の動向
株式共有原告適格については、判例・学説において様々な議論がなされてきた。大きく分けて、以下の3つの立場がある。
(1) 各共有者単独説
この立場は、各共有者が、その持分に応じて株主としての権利を行使できるとする立場である。すなわち、各共有者は、単独で原告となり、その持分に応じた範囲で訴訟を提起できるとする。この立場は、共有持分権の考え方を重視するものであり、各共有者の権利保護に資する点がメリットとして挙げられる。
(2) 全員共同説
この立場は、株式共有の場合、全ての共有者が共同で訴訟を提起しなければならないとする立場である。すなわち、一部の共有者のみでは原告適格を有さず、全員が共同原告となる必要があるとする。この立場は、会社に対する訴訟の乱立を防ぎ、会社運営の安定を図るという観点から主張されている。
(3) 代表者訴訟類推説
この立場は、民法上の組合における代表者訴訟の規定(民法653条)を類推適用し、共有者の中から一人を選任し、その代表者を通じて訴訟を提起できるとする立場である。この立場は、各共有者単独説と全員共同説の折衷案的な性格を有しており、実務上も妥当な解決策として考えられている。
4.今後の展望
株式共有原告適格については、いまだ判例・学説において統一的な見解が確立しているわけではない。今後の裁判例や学説の動向を注視していく必要がある。実務上は、紛争を未然に防ぐためにも、株式共有契約において、訴訟提起に関する事項を明確に定めておくことが重要となるだろう。
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