非上場株式納税猶予制度活用による雇用維持戦略

非上場株式納税猶予雇用維持制度の概要

非上場株式納税猶予雇用維持制度とは、中小企業の経営承継円滑化法に基づき、一定の要件を満たす場合に、後継者が相続または贈与により取得した非上場株式に係る相続税または贈与税の納税を猶予する制度です。この制度の目的は、後継者への株式承継時の税負担を軽減することで、円滑な事業承継を促進し、雇用を維持することです。

適用要件

非上場株式納税猶予雇用維持制度の適用を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

被相続人（贈与者の場合もあり）が、相続または贈与の開始の直前まで継続して5年以上、非上場株式発行会社の経営に携わっていること

後継者が、相続または贈与により取得した非上場株式発行会社の株式の議決権の過半数を取得すること

後継者が、相続または贈与税の申告期限までに、非上場株式発行会社の経営に従事することを開始し、かつ、その後も引き続き経営に従事すること

相続または贈与により取得した非上場株式発行会社の雇用を一定期間、維持すること

雇用維持の要件

非上場株式納税猶予雇用維持制度の適用を受けるためには、原則として、相続または贈与税の納税猶予を受けた日の属する事業年度の開始の日から起算して2年間（猶予期間）、その会社の雇用保険法上の被保険者の人数の合計が、基準期間における被保険者の人数の合計の80%以上であることが必要です。基準期間とは、相続または贈与の開始の日前2年間の各事業年度における各事業年度開始の日から起算して1年間です。

制度活用のメリット・デメリット

メリット

非上場株式納税猶予雇用維持制度の最大のメリットは、相続税または贈与税の納税を猶予することで、後継者への資金負担を軽減できることです。これにより、後継者は、事業承継に必要な資金を事業投資に回すことができます。また、雇用維持を条件とすることで、雇用が維持され、経済活性化にも貢献できます。

デメリット

非上場株式納税猶予雇用維持制度のデメリットとしては、納税が猶予されるだけであり、最終的には納税する必要があることが挙げられます。また、雇用維持の要件を満たさない場合、納税猶予が取り消され、利子税が課せられる可能性があります。さらに、制度適用のための申請手続きが複雑で、専門家のサポートが必要となる場合があります。

制度活用における注意点

非上場株式納税猶予雇用維持制度を活用する際には、以下の点に注意する必要があります。

制度適用前に、適用要件を満たしているか、専門家に相談する

猶予期間中も、雇用維持の状況を常に把握し、要件を満たせなくなる可能性があれば、速やかに対応策を講じる

納税猶予された相続税または贈与税の納税資金を計画的に準備する

非上場株式納税猶予雇用維持制度は、中小企業の後継者にとって、円滑な事業承継と雇用維持を実現するための有効な手段となりえます。ただし、制度の適用要件や注意点などを十分に理解した上で、活用することが重要です。