株式交付費費用処理理由

株式交付費の費用処理とその理由

企業が事業を成長させるためには、資金調達が必要不可欠です。資金調達の方法は様々ですが、その中でも株式発行による方法は、新たな借入を伴わずに資金を調達できるというメリットがあります。しかし、株式発行には、様々な費用が発生します。これらの費用は、適切に処理する必要があります。本稿では、株式発行に伴い発生する費用のうち、「株式交付費」に焦点を当て、その費用処理と株式交付費費用処理理由について詳しく解説します。

株式交付費とは

株式交付費とは、株式発行に伴い発生する費用のうち、法定費用を除く費用のことを指します。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

引受手数料：証券会社などの引受人に支払う手数料

監査法人報酬：株式発行に伴う監査費用

印刷費：目論見書などの印刷費用

公告費：株式発行の公告にかかる費用

株式交付費の費用処理

株式交付費は、発生時に「株式交付費」勘定で資産計上し、その後の事業年度において、定額法または定率法を用いて償却していきます。償却期間は、発行した株式の種類によって異なりますが、原則として５年以内とされています。

株式交付費の費用処理の具体例

例えば、株式会社Aが、普通株式100株を1株あたり1,000円で発行し、株式交付費として100,000円を支出したとします。この場合、株式会社Aは、以下のように会計処理を行います。

株式発行時

借方：現金預金 10,000,000円

貸方：資本金 100,000円

貸方：資本剰余金 9,900,000円

株式交付費の発生時

借方：株式交付費 100,000円

貸方：現金預金 100,000円

株式交付費の償却時（定額法を用いた場合、償却期間5年）

借方：販売費及び一般管理費 20,000円

貸方：株式交付費 20,000円

株式交付費費用処理理由

株式交付費を費用処理する理由は、以下の2点です。

1. 費用収益対応の原則

株式交付費は、株式発行という将来の経済的利益獲得のための活動に伴い発生する費用です。そのため、費用収益対応の原則に基づき、当該株式発行による経済的利益が実現する期間にわたって費用処理する必要があります。株式発行による経済的利益は、発行した株式によって調達した資金を用いた事業活動を通じて実現するため、株式交付費も、当該事業活動が行われる期間にわたって費用処理するのが適切と考えられます。

2. 企業会計原則

企業会計原則においても、株式交付費は、その発生時に資産計上し、その効益の及ぶ期間にわたって費用処理することとされています。これは、株式交付費が、株式発行という将来の経済的利益獲得のための支出であり、その効益が将来にわたって及ぶと考えられるためです。そのため、株式交付費費用処理理由として、企業会計原則に従うという側面も挙げられます。

株式交付費の会計処理に関する留意点

株式交付費の会計処理にあたっては、以下の点に留意する必要があります。

株式交付費の範囲：株式交付費として計上できる費用は、法令や通達で定められています。そのため、株式発行に伴い発生した費用が、株式交付費として計上できる費用であるかどうかを、事前に確認する必要があります。

償却方法：株式交付費の償却方法は、定額法または定率法のいずれかを選択することができます。償却方法によって、費用計上のタイミングが異なるため、企業の状況に応じて適切な方法を選択する必要があります。

開示：株式交付費の金額や償却方法については、財務諸表に注記する必要があります。これは、投資家などが、企業の財務状況を適切に判断するために必要な情報であるためです。

株式交付費は、株式発行に伴い必ず発生する費用であり、その費用処理は、企業会計上、非常に重要な事項です。企業は、株式交付費の会計処理に関する法令や会計基準を理解し、適切な処理を行う必要があります。