株式取得時効完成後の株主名簿訂正請求
株式取得時効とは
株式取得時効とは、一定の要件を満たした場合に、長期間にわたり株式を占有している者が、その株式の所有権を取得することをいいます。これは、民法上の取得時効の制度を株式に適用したものです。
株式取得時効の要件
株式取得時効が成立するためには、以下の要件を満たす必要があります。
1. 占有の意思を持つ占有
単に株式を保管しているだけでは足りず、自己の所有物として株式を占有する意思が必要です。これを「自己のための占有」といいます。例えば、株券を盗んだ場合や、他人から預かっている場合には、自己のための占有とは認められません。
2. 平穏・公然・継続した占有
隠れていたり、断続的な占有ではなく、周囲から見て、その者が株式を占有していることが明らかで、かつ、継続した占有である必要があります。
3. 10年間の占有
上記の要件を満たした占有が、10年間継続することが必要です。ただし、善意でかつ過失がない場合には、10年間ではなく、20年間の占有が必要です。
株式取得時効の効果
株式取得時効が成立すると、占有者は、その株式の所有権を取得します。これにより、占有者は、株主としての権利を行使することができるようになります。例えば、株主総会での議決権を行使したり、配当金の支払いを請求したりすることができます。
株式取得時効の意義
株式取得時効は、長期間にわたり株式を占有している者を保護し、権利関係を明確にするという意義があります。株式は、有価証券であり、譲渡が繰り返される可能性があります。そのため、長期間にわたり株式を占有している者が、その株式の所有権を取得できないとすると、権利関係が不安定になり、取引の安全が損なわれるおそれがあります。そこで、株式取得時効の制度を設けることによって、長期間にわたり株式を占有している者を保護し、権利関係を明確にすることで、取引の安全を図っているといえます。
株式取得時効における問題点
株式取得時効は、権利関係を明確にするというメリットがある一方で、問題点も指摘されています。例えば、真の所有者が長期間にわたり株式を奪われたままになってしまう可能性があります。また、株式取得時効が成立するためには、10年間または20年間という長期間の占有が必要となるため、証明が難しいという問題もあります。
株式取得時効の判例
株式取得時効に関する判例は、いくつか存在します。例えば、最高裁判所は、平成16年7月15日、会社が自己の発行する株式を所有していた場合でも、一定の要件の下では、株式取得時効が成立するとの判断を示しました。この判決は、株式取得時効の適用範囲を拡大するものとして、注目されています。
株式取得時効とその他の制度との関係
株式取得時効は、取得時効という民法上の制度を株式に適用したものです。そのため、取得時効に関する民法の規定が、株式取得時効にも適用されます。また、株式取得時効は、商法上の制度である株券喪失登録とは、異なる制度です。株券喪失登録は、株券を紛失した場合などに、その株券を無効にする手続きです。一方、株式取得時効は、株券の有無にかかわらず、一定の要件を満たせば、所有権を取得できる制度です。
株式取得時効に関する実務上の留意点
株式取得時効は、実務上、様々な場面で問題となる可能性があります。例えば、企業買収や相続などの場面で、株式取得時効が問題となることがあります。そのため、実務上は、株式取得時効の要件や効果について、正確に理解しておく必要があります。
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