株式譲渡における取得価格不明時の申告方法について

株式申告取得価格不明：その背景と対応

近年、相続税や贈与税の申告において、「株式申告取得価格不明」という問題がクローズアップされている。これは、保有する株式の取得時期が古く、その当時の取得価格が不明瞭な場合に起こる。特に、長期間にわたって保有されてきた株式や、相続や贈与によって取得した株式に多く見られる現象である。

株式申告取得価格不明が生じる原因

株式申告取得価格不明が生じる原因は、主に以下の3つに大別できる。

1. 記録の散逸

株式の取得から長期間が経過すると、当時の売買契約書や領収書などの証拠書類が散逸してしまうケースは少なくない。特に、紙媒体で管理していた場合には、紛失や劣化のリスクが高まる。また、転居や家族構成の変化に伴い、書類の保管場所が変わり、結果として紛失につながることもある。

2. 制度変更の影響

過去には、株式の取引制度や税制が現在とは異なっていた時期が存在する。例えば、かつては上場株式の取引に際して、証券会社が発行する「株券」の交付が一般的であった。しかし、現在は「株式保管振替制度」が導入され、株券の発行は廃止されている。そのため、古い株券を保有している場合、その取得価格を証明することが困難になる場合がある。

3. 相続・贈与による取得

相続や贈与によって株式を取得した場合、被相続人や贈与者から取得価格に関する情報が十分に提供されないケースも考えられる。特に、被相続人や贈与者がすでに高齢であったり、認知症を患っていたりする場合は、正確な情報を取得することが難しい。

株式申告取得価格不明への対応策

株式申告取得価格不明に直面した場合、納税者には適切な対応が求められる。具体的な対応策としては、以下の方法が考えられる。

1. 関係機関への照会

証券会社や証券保管振替機構などの関係機関に問い合わせることで、過去の取引記録を確認できる場合がある。ただし、機関によっては一定期間経過後の記録を保管していない場合もあるため、注意が必要である。

2. 類似株式の価格参照

保有する株式と類似した銘柄の株式の過去の取引価格を参考に、取得価格を推定する方法もある。ただし、市場環境や企業業績の変化などを考慮する必要があるため、専門家の意見を聞くことが望ましい。

3. 税務相談の活用

税理士などの専門家に相談することで、個々のケースに応じた適切な対応策を見つけることができる。税務調査への備えとしても、専門家のアドバイスを受けることは有効である。

まとめ

株式申告取得価格不明は、多くの納税者にとって身近な問題となりつつある。適切な対応を怠ると、税務調査の際に追徴課税を受ける可能性もあるため、注意が必要である。日頃から、株式の取得に関する書類を整理・保管しておくこと、また、専門家に相談するなどして、事前に対策を講じておくことが重要である。