分割型株式取得価額の理論的検討

分割型分割における株式取得価額の算定と留意点

企業再編手法の一つである会社分割は、近年、事業の選択と集中、事業承継、グループ経営の効率化などを目的として、多くの企業で活用されています。会社分割には、吸収分割、新設分割、そして分割型分割の3つの種類がありますが、本稿では、分割型分割における分割型分割株式取得価額の算定方法と、実務上の留意点について解説します。

分割型分割の概要

分割型分割とは、分割会社がその事業の全部または一部を承継させて、新たに設立する会社（承継会社）の株式を対価として、分割会社に交付する分割方法です。分割会社は、分割後も存続し、分割した事業以外の事業を継続します。分割型分割は、事業の分社化や事業承継などに用いられることが多いです。

分割型分割株式取得価額の算定方法

分割型分割においては、分割会社は、承継会社から対価として株式を取得します。この株式の取得価額を分割型分割株式取得価額といい、法人税法上、厳格な算定方法が定められています。分割型分割株式取得価額は、原則として、以下の算式によって算定します。

分割型分割株式取得価額 = 分割会社の純資産価額 × 承継会社の株式の交付割合

ここで、分割会社の純資産価額とは、分割の直前の貸借対照表上の純資産の額をいいます。また、承継会社の株式の交付割合とは、分割会社が承継会社から交付される株式数が、承継会社の発行済株式総数に占める割合をいいます。

分割型分割株式取得価額の特例

上記の方法による算定に加え、一定の要件を満たす場合には、分割型分割株式取得価額を時価で評価する方法などの特例が認められています。これらの特例を利用する場合には、それぞれの要件を慎重に検討する必要があります。

実務上の留意点

分割型分割における分割型分割株式取得価額の算定は、複雑な計算を伴う場合があり、税務上のリスクも伴います。そのため、実務上は、以下のような点に留意する必要があります。

1. 専門家への相談

分割型分割株式取得価額の算定は、専門的な知識を要するため、税理士や公認会計士などの専門家に相談することが重要です。専門家のアドバイスを受けることで、適正な価額を算定し、税務リスクを回避することができます。

2. 関連当事者間の取引

分割会社と承継会社が関連当事者である場合には、移転価格税制の適用を受ける可能性があります。移転価格税制とは、関連当事者間で通常の取引価格と異なる価格で取引が行われた場合に、税務当局が課税所得を調整する制度です。分割型分割株式取得価額が適正な範囲内であることを証明できるように、取引価格の根拠資料を整備しておく必要があります。

3. 税務申告

分割型分割を実施した際には、所定の期限内に税務申告書を提出する必要があります。申告書には、分割型分割株式取得価額の算定根拠などを記載する必要があります。誤った申告をすると、追徴課税や加算税などのペナルティが課される可能性があるため、注意が必要です。

分割型分割は、企業にとって大きなメリットをもたらす反面、複雑な手続きと税務上のリスクが伴います。分割型分割株式取得価額の算定は、分割後の企業活動に大きな影響を与えるため、専門家のサポートを受けながら、慎重に進めることが重要です。