株式実質所得者名義人登記と証券取引における課題

株式実質所得者名義人とは

近年、租税回避スキームの一つとして「株式実質所得者名義人」という言葉を耳にする機会が増えてきました。これは、本来であれば株主として配当所得などを得るべき人物（実質所得者）と、名義上株主として登録されている人物（名義人）が異なる状態を指します。つまり、実際にはAさんが株を保有し、その利益を得ているにもかかわらず、名義上はBさんが株主となっている状態です。

株式実質所得者名義人が問題となる理由

では、なぜ株式実質所得者名義人が問題となるのでしょうか。それは、主に以下の2つの理由が挙げられます。

1. 税負担の不公平性

株式実質所得者名義人を用いることで、本来負担すべき税金を免れたり、軽減したりすることが可能となります。例えば、高所得者であるAさんが、低所得者であるBさんを名義人とすることで、Aさんは所得税や住民税の負担を軽減することができます。これは、適正な税負担を歪め、税負担の不公平性を招く可能性があります。

2. 資金の流れの不透明化

株式実質所得者名義人は、資金の流れを不透明にする可能性があります。名義上はBさんが株主となっているため、AさんからBさんへの資金の流れが表面化しにくくなります。これは、脱税やマネーロンダリングなどの不正行為に悪用されるリスクも孕んでいます。

株式実質所得者名義人と認定されるケース

税務当局は、様々な状況証拠から株式実質所得者名義人を認定します。具体的には、以下のようなケースが挙げられます。

名義人が、株式の購入資金を提供していない

名義人が、株式に関する重要な決定権限を持っていない

実質所得者が、株式から生じる利益を自由に処分している

株式実質所得者名義人とみなされないための対策

株式実質所得者名義人とみなされないためには、以下の点に注意する必要があります。

株式の名義人と実質所得者を一致させる

名義人が株式の購入資金を提供し、その証拠を残しておく

名義人が株式に関する重要な決定権限を持つようにする

まとめ

株式実質所得者名義人は、税負担の不公平性や資金の流れの不透明化といった問題点があります。税務調査で指摘を受けると、追徴課税や延滞税などのペナルティが課される可能性もあるため、注意が必要です。株式の名義は、実質所得者と一致させることが重要です。