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株式売渡請求定款に基づく少数株主との対峙戦略

更新:2024-06-08 03:09:46読む:124

株式売渡請求定款の概要と実務上のポイント

会社法において、少数株主の保護は重要なテーマの一つです。少数株主は、その保有株式数が少ないことから、会社の意思決定に影響力を持ちにくく、経営陣の意に沿わない経営が行われた場合、不利な立場に置かれる可能性があります。そこで、会社法は、少数株主に対して、一定の要件の下で、自己の保有する株式を会社または他の株主に買い取らせる権利(株式買取請求権)を認めています(会社法166条、175条、309条等)。

この株式買取請求権の中でも、特に、会社が株式交換や株式移転、合併等の組織再編を行う際に、反対する株主に対して、その保有する株式を買い取るよう請求できる権利を「株式売渡請求権」と呼びます。そして、この株式売渡請求権を定める定款の条項を「株式売渡請求定款」と言います。

株式売渡請求定款の意義

株式売渡請求定款は、組織再編に反対する株主に対して、その株式を会社に買い取らせることで、当該株主を会社から退出させることを可能にするものです。これにより、会社は、組織再編に反対する株主の存在にかかわらず、円滑に組織再編を進めることができるようになります。他方、株主の立場から見ると、株式売渡請求定款は、組織再編に反対した場合でも、自己の保有する株式を公正な価格で買い取ってもらうことができるという、一種の安全弁としての役割を果たします。

株式売渡請求定款の内容

株式売渡請求定款には、一般的に、以下のような内容が定められます。

1. 対象となる組織再編

株式売渡請求定款の対象となる組織再編は、会社法上のすべての組織再編行為を含む場合もあれば、株式交換や株式移転、合併など、特定の組織再編行為に限定される場合もあります。定款の記載内容をよく確認する必要があります。

株式売渡請求定款

2. 請求権者

株式売渡請求権を有する株主(請求権者)は、原則として、当該組織再編に反対の意思表示をした株主となります。ただし、定款によっては、反対の意思表示をした株主だけでなく、組織再編決議において棄権した株主や、決議に出席しなかった株主も請求権者となる場合があります。

3. 売渡請求の対象となる株式

売渡請求の対象となる株式は、原則として、請求権者が組織再編決議の時点で保有していた株式となります。ただし、定款によっては、組織再編決議後に取得した株式も売渡請求の対象となる場合があります。

4. 株式の評価方法

売渡請求によって買い取られる株式の価格は、会社と請求権者との間の協議によって決定されます。ただし、協議が整しない場合は、裁判所が決定することになります。株式の評価方法は、定款で具体的に定められている場合もあれば、裁判所が会社法の規定に基づいて決定する場合もあります。

実務上のポイント

株式売渡請求定款に関する実務上のポイントとしては、以下のような点が挙げられます。

1. 定款作成時の留意点

株式売渡請求定款を作成する際には、会社法の規定や判例を踏まえ、会社と株主の双方にとって公平かつ合理的な内容となるよう、慎重に検討する必要があります。特に、株式の評価方法については、将来の紛争を防止するためにも、できる限り具体的に定めておくことが重要です。

株式売渡請求定款

株式売渡請求定款

2. 組織再編時の留意点

会社が組織再編を行う際には、株式売渡請求定款の規定内容を確認し、請求権者となる可能性のある株主に対して、適切な情報提供を行う必要があります。また、請求権者から株式売渡請求があった場合には、誠実に協議に応じ、適切な価格で株式を買い取るよう努める必要があります。

3. 紛争発生時の対応

株式売渡請求をめぐって会社と株主との間で紛争が発生した場合には、早期に弁護士等の専門家に相談し、適切な対応をとることが重要です。紛争が長期化すると、会社にとっても株主にとっても大きな負担となる可能性があります。

株式売渡請求定款は、組織再編を円滑に進めるための有効な手段となりえますが、その反面、紛争のリスクも孕んでいます。そのため、会社は、株式売渡請求定款の内容を十分に理解し、適切に運用していくことが重要です。

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