取締役退職株式

取締役退職株式とは

取締役退職株式とは、会社が取締役に対して、その功労に報いるために退任時に交付する株式のことを指します。これは、長年の経営への貢献に対する報酬としての側面と、退任後の生活の安定を図るための側面の二つを併せ持っています。

取締役退職株式の法的根拠

日本の会社法では、取締役退職株式に関する規定は特に設けられていません。そのため、取締役退職株式を交付する場合には、株主総会の特別決議による定款の変更が必要となります。定款には、支給対象者、支給時期、支給株式数、支給方法などを具体的に定める必要があります。

取締役退職株式のメリット

取締役退職株式を導入するメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

1. 優秀な人材の確保

魅力的な報酬体系を構築することで、優秀な人材の確保を促進することができます。特に、ベンチャー企業など成長過程にある企業にとっては、優秀な経営者を確保することは、企業の成長に不可欠です。取締役退職株式は、将来の株式価値の上昇を見込むことで、優秀な人材に対してインセンティブを与える効果があります。

2. 経営の長期安定化

取締役退職株式は、長期間にわたる経営への貢献を評価する制度であるため、経営者の長期的な視点での経営を促進する効果が期待できます。短期的な利益の追求ではなく、企業の長期的な成長を重視した経営判断を促す効果があります。

取締役退職株式のデメリット

一方で、取締役退職株式には以下のようなデメリットも存在します。

1. 株主価値の希薄化

新規に株式を発行するため、既存株主の株式価値が希薄化する可能性があります。そのため、株主総会において、十分な説明と理解を得ることが重要となります。

2. モラルハザードの発生

取締役退職株式を得るために、経営者が不適切な経営判断を行う可能性も否定できません。例えば、短期間で株価を上昇させるために、リスクの高い投資に偏ったり、粉飾決算に手を染めたりする可能性もあります。このようなモラルハザードを防ぐためには、適切な社内統制システムを構築することが重要となります。

取締役退職株式の導入事例

近年、取締役退職株式を導入する企業が増加傾向にあります。特に、グローバル企業を中心に、海外の報酬体系との整合性や優秀な人材の獲得競争の激化などを背景に、導入が進んでいます。

取締役退職株式の将来展望

取締役退職株式は、企業の経営戦略上、重要な要素の一つとなっています。今後、コーポレートガバナンスの強化や株主との対話などが一層求められる中で、取締役退職株式の在り方についても、引き続き議論が重ねられていくと考えられます。