遺贈株式取得による相続税納税猶予制度活用事例

遺贈株式をめぐる法的考察

遺贈株式は、被相続人が保有していた株式を、遺言によって特定の相続人または第三者に承継させることを指します。これは、民法上の「特定遺贈」に該当し、被相続人の意思に基づいて財産を承継させる効果的な手段として利用されています。本稿では、遺贈株式をめぐる法的問題点について、詳しく解説していきます。

1. 遺贈株式のメリットとデメリット

遺贈株式には、他の相続財産と比べて、以下の様なメリットとデメリットが存在します。

1.1 メリット

遺贈株式の最大のメリットは、被相続人の意思に基づいて、特定の相続人または第三者に株式を承継させることができる点にあります。これは、会社の経営権の承継などを円滑に進める上で、非常に有効な手段となります。また、遺贈によって株式を特定の相続人に集中させることで、相続税対策としても有効な場合があります。

1.2 デメリット

一方、遺贈株式には、以下の様なデメリットも存在します。まず、遺言の内容が不明確な場合、他の相続人との間でトラブルが発生する可能性があります。また、遺贈によって株式を取得した相続人は、相続税の納税義務を負うことになります。さらに、会社の経営権が集中することで、少数株主の権利が侵害される可能性も懸念されます。

2. 遺贈株式に関する紛争事例

遺贈株式をめぐる紛争は、近年増加傾向にあります。その背景には、企業のオーナー経営者が高齢化し、事業承継が重要な課題となっていることが挙げられます。以下に、遺贈株式に関する代表的な紛争事例を紹介します。

2.1 遺言の無効を主張するケース

被相続人の意思能力や遺言の形式に問題があるとして、遺言の無効を主張するケースは少なくありません。例えば、被相続人が認知症を患っていた場合や、遺言の内容が被相続人の真意を反映していないと判断された場合などは、遺言が無効とされる可能性があります。

2.2 遺留分減殺請求

遺贈によって、他の相続人の遺留分が侵害される場合、遺留分減殺請求が行われる可能性があります。遺留分とは、相続人が最低限相続できる財産の割合のことです。遺贈によって遺留分を下回る財産しか相続できない場合、相続人は遺留分減殺請求を行うことで、不足分の財産を請求することができます。

3. 遺贈株式に関する税務

遺贈株式を取得した相続人は、相続税の納税義務を負います。相続税の計算上、遺贈株式は、原則として評価額によって評価されます。評価額は、上場株式であれば、原則として相続開始日の終値が適用されます。非上場株式の場合は、類似会社の株価などを参考に、税理士が評価を行います。

4. 遺贈株式をスムーズに承継するために

遺贈株式をスムーズに承継するためには、以下の様な点に注意する必要があります。

4.1 遺言書の作成

まず、遺言書を作成する際には、法律の専門家である弁護士に相談することをお勧めします。弁護士に相談することで、遺言が無効とされないための注意点や、遺留分減殺請求のリスクなどを考慮した遺言書を作成することができます。

4.2 相続人とのコミュニケーション

また、相続人との間で、遺贈株式に関する十分なコミュニケーションをとることも重要です。遺言の内容について、事前に相続人に説明しておくことで、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。

4.3 税務対策

さらに、税理士に相談し、相続税の納税額をシミュレーションしておくことも重要です。相続税は高額になる場合もあるため、事前に納税資金を準備しておく必要があります。

遺贈株式は、被相続人の意思に基づいて財産を承継させる効果的な手段ですが、同時に様々な法的問題点も存在します。円滑な事業承継を実現するためにも、遺言書の作成、相続人とのコミュニケーション、税務対策などの点について、事前にしっかりと準備しておくことが重要です。