特定受贈株式の税務考察

特定受贈株式の概要

特定受贈株式とは、会社法上の制度の一つであり、従業員等の会社関係者に株式を付与する際に利用されるものです。具体的には、会社が従業員等に対して、無償または時価よりも低い価額で自己の株式を贈与することをいいます。特定受贈株式の制度は、従業員等のモチベーション向上や企業価値向上を目的として、2006年の会社法改正により導入されました。

特定受贈株式のメリット

特定受贈株式には、会社側と従業員側の双方にとってメリットがあります。会社側にとっては、従業員等のモチベーション向上や優秀な人材の確保、企業価値向上などが期待できます。従業員側にとっては、株式取得による財産形成や会社経営への参画意識の向上が期待できます。

従業員側のメリット

株式取得による財産形成: 株式の値上がり益や配当金による財産形成が期待できます。

会社経営への参画意識の向上: 株式保有を通じて、会社経営への参画意識や責任感が高まります。

モチベーション向上: 会社の業績向上への貢献意欲が高まり、モチベーション向上に繋がります。

会社側のメリット

優秀な人材の確保: 優秀な人材の獲得や定着に繋がります。

従業員等のモチベーション向上: 従業員等の会社への貢献意欲を高め、モチベーション向上に繋がります。

企業価値向上: 従業員等との利害関係の一致により、企業価値向上に繋がります。

特定受贈株式の要件

特定受贈株式を発行するためには、会社法上、以下のような要件を満たす必要があります。

付与対象者: 従業員（取締役、執行役、監査役、会計参与その他これらに準ずる者を含む）、取締役、会計参与、監査役、執行役又は支配人以外の使用人を除く。）であること。

発行価額: 無償または時価よりも低い価額であること。

株式の種類: 普通株式または議決権制限株式に限られます。

株主総会の特別決議: 株主総会の特別決議による承認が必要となります。

特定受贈株式と税金

特定受贈株式は、税制上も優遇措置が設けられています。従業員側は、特定受贈株式の付与を受けた時と、株式を譲渡した時に税金が発生します。会社側は、特定受贈株式の付与に伴い損金算入することができます。

特定受贈株式の導入状況

特定受贈株式は、導入されてから年々増加傾向にあります。特に、ベンチャー企業やスタートアップ企業において、人材獲得のための有効な手段として活用されています。

特定受贈株式の課題

特定受贈株式は、従業員等のモチベーション向上や企業価値向上に繋がる有効な手段ですが、一方で、以下のような課題も指摘されています。

従業員間の不公平感: 特定受贈株式の付与対象者や付与数によっては、従業員間に不公平感が生じる可能性があります。

株式価値の下落リスク: 株式価値が下落した場合、従業員が損失を被る可能性があります。

経営への影響力: 特定受贈株式の付与により、従業員が経営に影響力を持つ可能性があります。

まとめ

特定受贈株式は、会社側と従業員側の双方にとってメリットのある制度ですが、導入にあたっては、制度のメリット・デメリット、要件、税制などを十分に理解しておく必要があります。また、従業員間の不公平感や株式価値の下落リスクなどの課題にも留意が必要です。