非上場株式評価における取引相場のない株式の評価方法改正

取引相場のない株式等の評価改正の概要

近年、相続税や贈与税の増税に伴い、事業承継対策の一環として、取引相場のない株式等の評価が注目されています。取引相場のない株式等の評価改正は、税務上の重要事項であり、企業経営者や富裕層にとって、その影響は多岐にわたります。本稿では、取引相場のない株式等の評価改正の背景や内容、そして今後の展望について考察していきます。

取引相場のない株式等の評価改正の背景

従来の評価方法では、取引相場のない株式等の評価が、その会社の業績や資産状況を適切に反映していないという指摘がありました。特に、中小企業や未上場企業においては、その傾向が顕著であり、税負担の公平性の観点から、評価方法の見直しが必要とされていました。

そこで、2017年の税制改正において、取引相場のない株式等の評価改正が行われました。この改正は、より実態に即した評価方法を導入することで、税負担の公平化と、円滑な事業承継を促進することを目的としています。

取引相場のない株式等の評価改正の内容

今回の取引相場のない株式等の評価改正では、主に以下の点が変更されました。

1. 類似業種比準価額方式の見直し

従来の類似業種比準価額方式では、類似業種の株価を参考に評価を行っていましたが、今回の改正により、より類似性の高い業種を複数選択することが義務付けられました。これにより、より精緻な評価が可能となり、評価額の適正化が期待されます。

2. 配当還元方式の見直し

配当還元方式では、将来の配当予想に基づいて評価を行いますが、今回の改正により、割引率を算定する際に用いる指標が変更されました。具体的には、従来の「公社債利回り」から「類似会社の株価データ等に基づく期待収益率」に変更され、より市場の実勢を反映した評価が可能となりました。

3. 純資産価額方式の見直し

純資産価額方式では、会社の純資産価値に基づいて評価を行いますが、今回の改正により、不動産等の含み益に対する評価方法が変更されました。具体的には、従来の「固定資産税評価額」から「時価」に近い評価額に変更され、より実態に即した評価が可能となりました。

取引相場のない株式等の評価改正の影響

取引相場のない株式等の評価改正は、企業経営者や富裕層に大きな影響を与えると予想されます。特に、含み益の大きい不動産を保有する企業や、配当収入の多い企業においては、評価額が上昇し、納税額が増加する可能性があります。

一方、今回の改正は、事業承継対策にも影響を与えると考えられます。評価額の上昇は、承継時の税負担増加につながる可能性がありますが、同時に、適切な評価方法の導入により、後継者との間で、よりスムーズな事業承継を進めることができるようになるという側面も持ち合わせています。

今後の展望

取引相場のない株式等の評価改正は、今後も継続的な検討課題となることが予想されます。特に、国際的な税務環境の変化や、経済状況の変化等を踏まえ、より適切な評価方法の検討が求められます。

企業経営者や富裕層においては、取引相場のない株式等の評価改正の内容を十分に理解し、自社の状況に応じて、適切な事業承継対策や資産管理対策を講じていくことが重要となります。