相続させる遺言株式

遺言による株式の承継：相続させる遺言株式と注意点

企業のオーナー経営者にとって、自身の死後、保有する株式がどのように承継されるかは、事業の継続、従業員の雇用、そして家族の生活を守る上で非常に重要な問題です。 後継者を明確にし、円滑な事業承継を実現するために、遺言による株式の承継は有効な手段となります。特に、特定の後継者に相続させる遺言株式を明確にすることで、後継者争いを未然に防ぎ、安定的な事業承継を実現することができます。

遺言による株式承継のメリット

遺言による株式承継には、主に以下の3つのメリットがあります。

1. 後継者を明確にできる

遺言書を作成することで、自分の希望する人物に相続させる遺言株式を指定することができます。これは、法律で定められた法定相続とは異なる形で、自分の意思を反映した株式の承継を可能にするもので、後継者争いを防ぎ、円滑な事業承継を実現する上で非常に重要です。例えば、法定相続人である配偶者ではなく、経営手腕のある長男に株式を承継させたい場合などに有効です。

2. 相続税対策になる

遺言によって株式を特定の相続人に相続させることで、相続税の負担を軽減できる場合があります。例えば、後継者となる者に株式を集中して相続させることで、他の相続人の相続税負担を軽減することができます。また、相続税の納税猶予制度を利用し、後継者の納税負担を軽減する対策も考えられます。

3. 事業の継続性を確保できる

後継者を明確にし、株式の承継方法を定めておくことで、事業の安定的な継続を図ることができます。株式が分散してしまい、経営方針が定まらなくなる事態を避けることができ、従業員の雇用を守ることにも繋がります。

遺言による株式承継の種類

遺言による株式承継には、大きく分けて「特定遺贈」と「包括遺贈」の2種類があります。

1. 特定遺贈

特定の財産を特定の人に相続させる方法です。相続させる遺言株式の銘柄、株数などを具体的に指定します。例えば、「〇〇株式会社の株式1,000株を長男に相続させる」といった形です。

2. 包括遺贈

財産全体を特定の人に相続させる方法です。例えば、「すべての財産を妻に相続させる」といった形です。この場合、株式だけでなく、預貯金や不動産などのすべての財産が相続されます。

遺言作成の注意点

1. 専門家への相談

遺言書の作成には、法律や税金に関する専門知識が必要です。誤った内容の遺言書を作成してしまうと、後々トラブルに発展する可能性もあるため、弁護士や税理士などの専門家に相談しながら作成することをおすすめします。特に、会社法や相続税法などの専門知識が必要となるため、専門家のアドバイスを受けることが重要です.

2. 遺言の内容の明確化

遺言書の内容は、具体的に明確に記載する必要があります。相続させる遺言株式の銘柄や株数、後継者となる人物の氏名や住所などを正確に記載する必要があるほか、遺言執行者を指定することで、遺言の内容が確実に実行されるようにする必要があります。あいまいな表現や記載漏れがあると、後々解釈をめぐって争いが生じる可能性があります。

3. 定期的な見直し

一度作成した遺言書は、将来にわたって有効なわけではありません。結婚や出産、会社の業績変化など、状況の変化に応じて遺言の内容を見直す必要があります。定期的に見直しを行い、内容を最新の状態に保つことが大切です。

遺言による株式承継は、事業承継をスムーズに行うための有効な手段です。遺言書の作成を通して、自らの意思を明確にし、会社の未来、そして家族の未来を守っていきましょう。