敵対的買収における株式取得防衛策の法的考察
株式買収防衛策とは
株式買収防衛策とは、企業が敵対的な買収者から自社の経営権を守るためにあらかじめ講じておく対策のことです。買収防衛策には、買収を仕掛けにくくする「事前防衛策」と、買収を仕掛けられた後に発動する「事後防衛策」の2種類があります。
事前防衛策
事前防衛策は、買収者が買収を仕掛けることを断念させることを目的としています。主な事前防衛策には、以下のようなものがあります。
1. 定款変更
定款を変更することで、買収者の議決権比率を制限したり、買収提案に対する承認要件を厳格化したりすることができます。例えば、株主総会の特別決議に必要な議決権比率を引き上げたり、買収提案を審議する特別委員会の設置を義務付けたりすることができます。
2. 種類株式の発行
種類株式とは、議決権や配当金などの権利内容が異なる株式のことです。経営陣に有利な議決権を持つ種類株式を発行することで、買収者が議決権比率を高めることを困難にすることができます。
3. 従業員持株会の設立
従業員持株会とは、従業員が自社株を購入するための制度です。従業員持株会が一定比率以上の株式を保有することで、買収者が議決権比率を高めることを困難にすることができます。
事後防衛策
事後防衛策は、買収者が買収を仕掛けてきた後に発動する防衛策です。主な事後防衛策には、以下のようなものがあります。
1. ホワイトナイトの導入
ホワイトナイトとは、敵対的な買収者に対抗するために、友好的な第三者に株式を取得してもらうことです。ホワイトナイトは、買収者よりも高い価格で株式を取得することで、買収を阻止することができます。
2. パックマンディフェンス
パックマンディフェンスとは、買収者に対して逆に買収を仕掛けることです。買収者は、自社が買収されることを避けるために、買収提案を撤回せざるを得なくなる可能性があります。
3. ポイズンピル
ポイズンピルとは、買収者が一定比率以上の株式を取得した場合に、既存株主に新株予約権を無償で発行するなどの方法で、買収者の株式価値を希薄化させることです。
株式買収防衛策の導入状況
日本では、1990年代後半から2000年代前半にかけて、敵対的買収が相次ぎました。これを受けて、多くの企業が株式買収防衛策を導入しました。しかし、近年では、敵対的買収が減少していることや、株主の権利意識の高まりなどから、株式買収防衛策を導入している企業は減少傾向にあります。
株式買収防衛策の是非
株式買収防衛策は、敵対的な買収から企業を守るためには有効な手段となりえます。しかし、一方で、株式買収防衛策は、経営陣の保身に利用される可能性もあり、株主の利益を損なう可能性も指摘されています。そのため、株式買収防衛策を導入する際には、その必要性や妥当性について、十分な検討が必要です。
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