株式相続人未確定における遺産分割協議の進め方

株式相続人が決まっていない場合の対応

人が亡くなり、遺産として株式が残されるケースは少なくありません。特に、事業承継対策が十分にされていなかった場合など、株式相続人が決まっていない、あるいは相続人全員の合意が得られないといった事態が発生することがあります。このような場合、残された株式をどのように扱うべきか、適切な対応策を講じる必要があります。

１．株式相続の手続きの基礎

まず、一般的な株式相続の手続きについて確認しておきましょう。被相続人が保有していた株式は、相続開始と同時に相続人へと移転します。そして、相続人たちは、遺産分割協議を行い、誰がどの株式を相続するかを決定します。この協議がまとまれば、遺産分割協議書を作成し、証券会社に提出することで、名義変更の手続きが行われます。

２．株式相続人が決まっていない場合の課題

しかし、実際には、株式相続人が決まっていない、あるいは相続人全員の合意が得られないケースも少なくありません。例えば、

遺言書が存在しない

相続人の一部と連絡が取れない

相続人間で意見が対立し、遺産分割協議がまとまらない

といった状況が起こりえます。このような場合、株式の名義変更が滞り、企業経営に支障をきたす可能性も出てきます。具体的には、

株主総会での議決権行使ができない

配当金の受領者が確定しない

新たな融資を受けにくくなる

といった問題が発生する可能性があります。

３．株式相続人が決まっていない場合の対応策

では、株式相続人が決まっていない場合、具体的にどのような対応策を講じることができるのでしょうか。ここでは、主な対応策を３つご紹介します。

３-１．調停

家庭裁判所に調停を申し立て、相続人全員で話し合い、株式の扱いについて合意を目指す方法です。調停では、中立的な立場の調停委員が間に入り、当事者間の合意形成を支援します。調停で合意が成立すれば、その内容は法的拘束力を持ちます。

３-２．審判

調停でも合意が成立しない場合は、家庭裁判所が審判によって、株式の帰属を決定します。審判の内容は、当事者にとって強制力を持つため、不服がある場合は、異議申し立てを行う必要があります。

３-３．遺留分減額請求

被相続人が遺言書で特定の相続人に多くの株式を相続させる内容を記載していた場合、他の相続人は、遺留分減額請求を行うことができます。遺留分とは、相続人が最低限相続できる遺産の割合のことです。遺留分減額請求が認められると、遺言の内容を変更し、自身の相続分を確保することができます。

４．専門家への相談の重要性

株式相続は、複雑な法律や手続きが絡むため、専門家のサポートを受けることが重要です。特に、株式相続人が決まっていない場合や相続人間でトラブルが発生している場合は、弁護士や税理士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。

専門家は、相続に関する豊富な知識と経験に基づき、最適な解決策を提案してくれます。また、手続きの代行なども行ってくれるため、相続人の方の負担を軽減することができます。

株式相続は、企業の将来を左右する重要な問題です。株式相続人が決まっていない場合や相続に関するトラブルを抱えている場合は、早めに専門家に相談し、適切な対応策を講じることが重要です。