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株式譲渡制限 法務省令基準適合性検討事例

更新:2024-06-08 01:06:45読む:50

株式譲渡制限会社における新株予約権の発行と利害関係人の保護

日本の会社法において、株式譲渡制限会社は、その株式の譲渡について定款で制限を設けることができる。これは、会社と株主との間の関係を密接に保ち、経営の安定化を図ることを目的としている。しかし、一方で、株式の流動性が制限されることから、資金調達が困難になるという側面も持ち合わせている。そこで、資金調達の手段として、新株予約権の発行が注目されている。

株式譲渡制限会社

新株予約権とは、将来、一定の条件で株式の発行を請求できる権利のことである。株式譲渡制限会社においては、この新株予約権を発行することで、株式の流動性を大きく損なうことなく、必要な資金を調達することが可能となる。しかしながら、新株予約権の発行は、既存の株主の利益を害する可能性も孕んでいる。例えば、新株予約権の行使によって、既存株主の議決権が希釈化される可能性や、一株当たりの価値が低下する可能性も考えられる。

そこで、会社法は、株式譲渡制限利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定める場合を除き、新株予約権の発行について、株主総会の特別決議による承認を必要としている(会社法第199条、第206条)。これは、新株予約権の発行が既存株主に与える影響が大きいため、その意思を十分に反映させる必要があるからである。具体的には、新株予約権の発行目的、行使価額、行使期間などが、既存株主にとって不利益なものではないか、慎重に判断する必要がある。

株式譲渡制限利害関係人の利益を害するおそれがない場合

それでは、どのような場合に、新株予約権の発行が株式譲渡制限利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定めると認められるのだろうか。会社法施行規則第51条は、以下の3つの要件を全て満たす場合を挙げている。

新株予約権の目的が、事業の円滑な遂行に必要な資金の調達又は財務内容の改善を図るためのものであること

新株予約権の行使価額が、発行する時の会社の財産状態に照らして相当と認められること

新株予約権の募集事項の決定について、株主総会の決議があった日からその発行の日までの間に、当該募集事項の内容に変更を加えないこと

これらの要件は、いずれも、新株予約権の発行が既存株主にとって不利益なものではないことを担保するためのものと言える。例えば、第一の要件は、新株予約権の発行目的が、会社全体の利益に資するものであることを求めている。第二の要件は、新株予約権の行使価額が、既存株主の株式価値を不当に毀損するものではないことを担保している。第三の要件は、新株予約権の発行条件が、株主総会で承認された内容から変更されないことを保証するものである。

株式譲渡制限会社

新株予約権の発行と経営の柔軟性

このように、株式譲渡制限会社における新株予約権の発行は、厳格な要件の下に認められている。これは、株式譲渡制限会社においては、株主の構成が固定化されやすく、経営に対する監視の目が行き届きにくいという側面があるためである。そのため、新株予約権の発行によって、既存株主の利益が不当に害されることのないよう、法令上、厳格な規制が設けられているのである。

しかしながら、近年、ベンチャー企業など、成長過程にある企業においては、資金調達の手段として、新株予約権の活用が不可欠となっている。そこで、これらの企業の資金調達を円滑化するため、株式譲渡制限利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定める範囲を拡大するなど、規制の柔軟化を求める声も上がっている。今後、株式譲渡制限会社における新株予約権の発行に関する法制度は、企業の資金調達のニーズと、既存株主の保護とのバランスを図りながら、更なる検討が重ねられていくものと考えられる。

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