非上場企業における事業承継問題の考察

株式上場していない企業のM&A

近年、M&A市場において、株式上場していない企業、いわゆる非上場企業への関心が高まっている。従来、M&Aの対象は上場企業が中心であったが、近年では成長性の高い非上場企業に注目が集まり、M&Aの件数も増加傾向にある。本稿では、株式上場していない企業のM&Aについて、その現状と今後の展望について考察する。

非上場企業M&Aの現状

M&A市場全体における非上場企業M&Aの件数は、近年増加傾向にある。これは、日本経済の成熟化に伴い、大企業においても既存事業の成長が鈍化し、新たな成長の源泉を求めて非上場企業への投資を積極化させていることが背景にあると考えられる。また、近年ではスタートアップ企業の資金調達環境が整備され、IPO（新規株式公開）以外の選択肢としてM&Aを選択する企業も増えていることも、非上場企業M&Aの増加に拍車をかけている。

非上場企業M&Aのメリット

非上場企業M&Aには、以下のようなメリットがある。

成長性の高い企業を比較的低いコストで買収できる可能性がある

上場企業と比較して、競争が少なく、有利な条件で買収交渉を進められる可能性がある

経営陣との距離が近く、買収後の統合をスムーズに進めやすい

非上場企業M&Aのデメリット

一方で、非上場企業M&Aには、以下のようなデメリットも存在する。

財務情報などの企業情報が少なく、企業価値の評価が難しい

経営体制や内部統制が未整備な場合があり、買収後の統合に時間を要する可能性がある

株式市場で評価されていないため、買収価格が割高になる可能性がある

今後の展望

今後、日本企業の事業承継問題の深刻化や、スタートアップ企業の増加などを背景に、非上場企業M&Aはますます活発化すると予想される。特に、ITやヘルスケアなどの成長分野における非上場企業は、今後もM&Aの対象として注目を集めると考えられる。また、クロスボーダーM&Aにおいても、株式上場していない企業がターゲットとなるケースが増加すると予想される。海外企業にとっては、日本市場への進出手段として、また、日本企業にとっては、海外展開を加速させる手段として、非上場企業M&Aは有効な選択肢となり得る。

非上場企業M&Aは、成長戦略の一環として、あるいは事業承継問題の解決策として、ますます重要な選択肢となっていくであろう。M&Aを成功させるためには、綿密な準備と戦略的な実行が不可欠となる。