株式仮装売買規制と金融市場の安定化

株式仮装売買とは

株式仮装売買とは、実際には売買する意思がないにもかかわらず、株価を操作する目的で行われる売買のことです。具体的には、証券取引所において、同一の銘柄の株式を、同一の価格、同一の数量で、同時に買い注文と売り注文を出す行為を指します。これにより、市場に多くの取引が行われているかのような錯覚を与え、株価を意図的に変動させることが可能となります。

株式仮装売買の目的

株式仮装売買の主な目的は、以下の通りです。

1. 株価のつり上げ

多くの買い注文を出し、市場に株価が上昇しているかのような錯覚を与えることで、他の投資家を誘い込み、高値で株式を売却することを目的とします。

2. 株価のつなぎ止め

株価が下落する局面において、売り注文を吸収するために買い注文を出し、株価の下落を阻止することを目的とします。

3. 流動性の演出

実際には取引が少ない銘柄について、売買を活発に見せることで、他の投資家の関心を集め、売買を促進させることを目的とします。

株式仮装売買の違法性

株式仮装売買は、金融商品取引法で禁止されている行為です。これは、市場の公正性を害し、投資家の投資判断を誤らせる可能性があるためです。違反した場合には、刑事罰として10年以下の懲役または1億円以下の罰金、またはその両方が科せられます。また、行政罰として課徴金が科されることもあります。

株式仮装売買の事例

過去には、仕手筋と呼ばれる集団が、株式仮装売買を含む不正な手段を用いて株価を操作し、巨額の利益を得ていたケースが後を絶ちませんでした。近年では、インターネット取引の普及により、個人が比較的容易に株式売買を行うことができるようになったことから、個人投資家による株式仮装売買も増加傾向にあります。

事例1：A社のケース

20XX年、A社の株価が急騰しました。証券取引等監視委員会の調査の結果、複数の証券口座を用いて、同一人物がA社の株式を売買していたことが判明しました。この人物は、市場に大量の買い注文を出すことで株価を意図的につり上げ、高値で売却していたのです。この事件は、金融商品取引法違反（相場操縦）として摘発され、関係者は刑事罰と行政罰の両方を科されました。

事例2：B社のケース

20YY年、B社の株価が急落しました。その際、ある個人投資家が、インターネット掲示板に「B社の株価は必ず上昇する」という書き込みを繰り返し行い、他の投資家に買いを促していました。しかし、その一方で、この投資家は、保有していたB社の株式をすべて売却していたことが判明しました。これは、風説を流布して株価を操作する行為であり、金融商品取引法違反（風説の流布）として摘発されました。

株式仮装売買の防止策

株式仮装売買を防止するためには、証券取引等監視委員会による監視の強化、投資家に対する啓蒙活動の推進などが重要です。また、証券会社においても、顧客の売買状況を監視し、不審な取引を発見した場合には、当局に通報するなどの対応が求められます。

投資家一人ひとりが、株式仮装売買の手口や違法性について正しく理解し、不審な動きを見つけた場合には、関係当局に報告することが重要です。