株式低廉譲受判例
株式低廉譲受と税務上の問題点
企業活動において、株式の譲渡は日常的に行われる取引です。その中でも、時価よりも低い価格で株式を譲渡することを「株式低廉譲受」と言います。株式低廉譲受は、親子会社間や、経営者と従業員との間など、様々な関係において見られます。本稿では、株式低廉譲受に関する法的問題点と税務上の問題点について解説し、企業が取るべき対策について考察します。
1.株式低廉譲受とは
株式低廉譲受とは、株式を時価よりも低い価額で譲り受けることを指します。具体的には、以下のいずれかの場合に該当します。
譲渡価額が、譲渡時の株式の時価を下回る場合
譲渡価額が無償である場合
株式低廉譲受は、譲受者にとって経済的な利益をもたらす一方、譲渡者にとっては経済的な損失をもたらす可能性があります。そのため、法律上、税務上、様々な問題点が生じ得ます。
2.株式低廉譲受に関する法的問題点
株式低廉譲受に関する法的問題点としては、主に以下の点が挙げられます。
(1) 会社法上の問題
会社法上、株式の発行価額は、原則として、その払込期における当該株式の発行価額を下回ってはならないとされています(会社法207条)。そのため、株式を時価よりも低い価額で発行した場合、発行価額の不足を理由に、株主総会決議の取消しや、取締役の責任追及が問題となる可能性があります。ただし、株式低廉譲受判例の中には、一定の要件の下で、時価よりも低い価額での株式譲渡が認められる場合もあるとされています。
(2) 民法上の問題
民法上、贈与契約は、当事者の一方が無償で財産を与えることを約し、相手方がこれを受諾することによって、その効力を生じます(民法549条)。そのため、株式を無償で譲渡した場合、贈与契約が成立し、贈与税の課税対象となる可能性があります。また、株式低廉譲受が、実質的に贈与と認められる場合には、贈与税の課税問題に加えて、民法上の贈与契約に関する問題も生じ得ます。
3.株式低廉譲受に関する税務上の問題点
株式低廉譲受に関する税務上の問題点としては、主に以下の点が挙げられます。
(1) 譲渡所得税
株式を譲渡した場合、譲渡所得税が課税されます。譲渡価額が時価よりも低い場合には、時価と譲渡価額との差額が譲渡所得とみなされ、譲渡所得税が課税される可能性があります。ただし、株式低廉譲受判例の中には、一定の要件の下で、時価と譲渡価額との差額が贈与とみなされ、贈与税の課税対象となる場合もあるとされています。
(2) 贈与税
株式を無償で譲渡した場合、贈与税が課税されます。また、株式低廉譲受が、実質的に贈与と認められる場合には、時価と譲渡価額との差額が贈与財産とみなされ、贈与税が課税される可能性があります。贈与税の税率は、譲渡所得税の税率よりも高いため、株式低廉譲受が贈与とみなされると、多額の税負担が生じる可能性があります。
(3) 法人税
株式を低廉譲渡した場合、譲渡会社には、時価と譲渡価額との差額に相当する金額が、寄付金として損益計算書に計上されます。寄付金は、原則として、法人税の計算上、損金として認められません。そのため、株式低廉譲受によって、譲渡会社の法人税負担が増加する可能性があります。
4.企業が取るべき対策
株式低廉譲受に伴う法的リスクや税務リスクを回避するためには、企業は以下のような対策を講じることが重要です。
(1) 時価の算定
株式低廉譲受を行う場合には、まず、譲渡する株式の時価を適正に算定することが重要です。時価の算定方法は、株式の種類や規模、取引状況などによって異なります。一般的には、類似会社比較法、DCF法、純資産価額法などが用いられます。時価の算定にあたっては、専門家の意見を聞くなどして、慎重に行う必要があります。
(2) 譲渡契約書の締結
株式低廉譲受を行う場合には、譲渡契約書を締結し、譲渡価額の根拠、譲渡の目的、当事者の責任などを明確にしておくことが重要です。譲渡契約書を作成することで、後々のトラブルを防止することができます。
(3) 税務上の処理
株式低廉譲受を行う場合には、税務上の処理についても十分に検討する必要があります。譲渡所得税、贈与税、法人税など、様々な税金が関係するため、専門家のアドバイスを受けるなどして、適切な処理を行うことが重要です。
5.まとめ
株式低廉譲受は、企業にとって有効な資金調達手段となり得る一方、法的リスクや税務リスクを伴う取引です。企業は、株式低廉譲受を行う際には、事前に十分な検討を行い、リスクを回避するための対策を講じることが重要です。具体的には、専門家のアドバイスを受けるなどして、法的リスクや税務リスクを分析し、適切な対策を講じる必要があります。
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