株式売却執行条件寄成

株式売却執行条件寄成：M&Aにおける重要なプロセス

M&A（合併・買収）において、株式の売却は重要なプロセスの一つです。特に、大規模な企業買収や複雑な取引構造を持つ場合には、売却契約締結後も、クロージング（株式譲渡実行日）までに一定の条件を満たす必要がある場合があります。このクロージングまでに満たすべき条件を「クロージング条件」と呼びますが、その中でも、売主が買主に対して、クロージングまでに特定の行為を行うことを約束するものを「株式売却執行条件寄成」と呼びます。

株式売却執行条件寄成の内容

株式売却執行条件寄成の内容は、M&Aの規模や対象事業の内容、当事者間の交渉力関係などによって大きく異なりますが、一般的には、以下のような内容が挙げられます。

1. 許認可等の取得

M&Aの対象となる事業によっては、独占禁止法や電気通信事業法など、関係当局による許認可や届出が必要となる場合があります。このような場合には、クロージングまでに必要な許認可等を取得することを株式売却執行条件寄成として、売主が買主に対して約束することが一般的です。

2. 従業員への説明と同意取得

M&Aに伴い、従業員の雇用関係が移転する場合には、事前に従業員に対して、M&Aの内容や雇用条件への影響について説明を行い、同意を得る必要があります。このような場合には、クロージングまでに必要な従業員への説明と同意取得を株式売却執行条件寄成として、売主が買主に対して約束することが一般的です。

3. 主要取引先との契約の承諾取得

M&Aの対象となる事業が、特定の取引先に大きく依存している場合には、M&Aに伴い、当該取引先との契約関係に影響が生じる可能性があります。このような場合には、クロージングまでに主要取引先から契約の承諾を得ることを株式売却執行条件寄成として、売主が買主に対して約束することが一般的です。

株式売却執行条件寄成の意義

株式売却執行条件寄成は、買主にとって、クロージングリスクを軽減する効果があります。クロージングリスクとは、売主の都合などにより、クロージングが遅延したり、実現しなかったりするリスクのことです。株式売却執行条件寄成を設けることで、買主は、クロージング前に、売主がクロージング条件を満たすための努力を尽くすことを担保することができます。

一方、売主にとっては、株式売却執行条件寄成は、クロージング前に過大な負担を負う可能性があります。例えば、許認可等の取得には、多大な時間と費用を要する場合があります。そのため、売主としては、株式売却執行条件寄成の内容をできる限り限定的にするよう交渉することが重要となります。

株式売却執行条件寄成の履行と違反

売主は、株式売却執行条件寄成で約束した事項を、誠実に履行する義務を負います。売主が正当な理由なく株式売却執行条件寄成を履行しない場合には、買主は、売主に対して、契約違反に基づく損害賠償請求や契約解除などの法的措置をとることができます。

株式売却執行条件寄成は、M&Aにおける重要なプロセスの一つであり、クロージングリスクを適切に管理するために、売主と買主の間で、その内容について十分に協議し、契約書に明記しておくことが重要です。