株式低額譲渡自己株式

株式低額譲渡自己株式の概要

株式低額譲渡自己株式とは、会社法上の制度の一つであり、会社が自己の株式を、市場価格よりも低い価格で譲渡することを指します。自己株式の取得は、会社法上、厳格な制限が課されていますが、株式低額譲渡自己株式は、一定の要件を満たす場合に限り、認められています。

株式低額譲渡自己株式の目的

企業が株式低額譲渡自己株式を行う主な目的は以下の点が挙げられます。

1.従業員へのインセンティブ付与

従業員に対して、自社の株式を低価格で譲渡することで、従業員のモチベーション向上やエンゲージメント強化を図ることができます。

2.資本政策の柔軟性向上

市場価格よりも低い価格で自己株式を処分することで、資金調達手段の一つとして活用することができます。

3.敵対的買収対策

自己株式の保有比率を高めることで、敵対的な買収者から会社を守る効果も期待できます。

株式低額譲渡自己株式の要件

株式低額譲渡自己株式を行うためには、会社法上の厳格な要件を満たす必要があります。主な要件は以下の点が挙げられます。

1.譲渡価格の決定

譲渡価格は、公正な評価方法によって算定された価格である必要があります。一般的には、直近の株価や類似会社の株価などを参考に決定されます。

2.株主総会の特別決議

株式低額譲渡自己株式を行うためには、株主総会において、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成による特別決議が必要です。

3.譲渡制限株式

譲渡制限株式を株式低額譲渡自己株式の対象とする場合には、株主総会において、出席した株主の議決権の過半数の賛成による特別決議が必要です。

株式低額譲渡自己株式の手続き

株式低額譲渡自己株式の手続きは、以下のようになります。

取締役会決議

株主総会における特別決議

譲渡契約の締結

株式の譲渡

株式低額譲渡自己株式の注意点

株式低額譲渡自己株式を行う際には、以下の点に注意する必要があります。

1.株主間の利益相反

株式低額譲渡自己株式は、既存の株主の利益を害する可能性があるため、株主間で利益相反が生じないように注意する必要があります。

2.税務上の取扱い

株式低額譲渡自己株式は、税務上、贈与とみなされる場合があります。そのため、事前に税務上の取扱いについて専門家に相談する必要があります。

株式低額譲渡自己株式と類似の制度

株式低額譲渡自己株式と類似の制度として、以下のようなものがあります。

1.自己株式の消却

会社が自己株式を取得し、消却することを指します。自己株式の消却は、発行済株式数を減少させることで、一株当たりの利益や議決権の向上を図ることができます。

2.株式報酬

従業員に対して、自社の株式を報酬として付与することを指します。株式報酬は、従業員のモチベーション向上やエンゲージメント強化を図る効果が期待できます。

まとめ

株式低額譲渡自己株式は、従業員へのインセンティブ付与や資本政策の柔軟性向上など、様々なメリットがある一方、株主間の利益相反や税務上の取扱いなど、注意すべき点も多岐にわたります。株式低額譲渡自己株式の実施を検討する際には、事前に専門家に相談するなど、慎重に進める必要があります。